
朝、目が覚めたとき、カーテンの隙間から光がまっすぐ差し込んでいた。7月の日曜日の朝というのは、どこか特別な重さがある。平日とも土曜日とも違う、あの独特のゆっくりとした時間の流れ。子どもたちがまだ寝ている間に台所に立って、お弁当の準備を始めた。
冷蔵庫を開けると、昨夜の残りの鶏もも肉が目に入った。これを使おう、と思った瞬間から、頭の中でメニューが組み上がっていく。唐揚げ、卵焼き、ブロッコリーのゆでたもの、ミニトマト。シンプルだけれど、野外で食べるとなぜこんなにおいしく感じるのだろう。子どものころ、母が作ってくれたお弁当を河川敷で食べた記憶がある。アルミのお弁当箱の、あの金属のにおいと、梅干しの酸っぱさ。あのころのおいしさは、きっと場所が作り出していたものだ。
今日は家族で近くの「碧野公園」へ行くことにしていた。駅から歩いて15分ほど、大きなクスノキが何本も並んでいて、夏でも木陰が涼しい場所だ。子どもたちはもうレジャーシートをどこにしまったか探し始めている。
唐揚げを作るのは意外と簡単だ。鶏もも肉を一口大に切り、しょうゆ・酒・みりんを各大さじ1、おろしにんにくとおろし生姜を少々加えて15分ほど漬け込む。あとは片栗粉をまぶして、170度の油で4分、一度取り出して2分休ませてから再び1分揚げる。この二度揚げがカリッとした食感の決め手になる。冷めてもおいしいのが、お弁当向きのいいところだ。
卵焼きは甘めに仕上げた。卵3つに砂糖大さじ1、塩少々、だし大さじ2を合わせて、じっくり巻いていく。焼いている途中、フライパンの端で卵がふわっと膨らんで、思わず「あ」と声が出た。ちょっと巻き損ねたけれど、まあ味は変わらない。形より愛情、という言葉を都合よく思い出した。
お弁当箱は、最近買った「ハコモリ」というブランドのもので、木目調の蓋がついた二段式のタイプだ。仕切りがついていて、汁気のあるものも安心して詰められる。上段にごはんと梅干し、下段に唐揚げ、卵焼き、ブロッコリー、ミニトマトを並べると、思いのほか彩りがきれいにまとまった。
公園に着いたのは10時半ごろだった。クスノキの葉が風に揺れるたびに、光がまだらに地面に落ちてくる。レジャーシートを広げると、下から土と草の混じった、少しだけ湿った香りが立ち上がった。夏の野外の空気というのは、それだけでどこか懐かしい気持ちにさせる。
子どもたちがシートに座るなり「お弁当まだ?」と言い出した。まだ11時にもなっていないのに。夫が水筒のふたを開けながら、「もう少し待て」と笑っている。その横顔を見ながら、こういう日曜日が続けばいいと思った。
お弁当箱を開けた瞬間、子どもが「唐揚げ!」と声を上げた。家で食べるのと同じものなのに、野外で食べると特別に見えるらしい。ひとつつまんで口に入れると、カリッとした衣の音が聞こえた気がした。風の音と、遠くで子どもたちが遊ぶ声と、鳥のさえずり。五感がいつもより少しだけ鋭くなっているような感覚がある。
家族で囲むお弁当には、レシピ以上のものが詰まっている。日曜日の朝の眠気も、ちょっと失敗した卵焼きも、全部ひっくるめて、それがこの一箱の中に入っている。完璧じゃなくていい。野外で食べるおべんとうは、それだけでもう十分においしいのだから。
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