
土曜日の朝というのは、どこか特別な空気をまとっている。平日とは違う、少しだけゆっくりと流れる時間のなかで、わたしはいつも台所に立つ。今日は友人と遊ぶ約束がある。行き先は近所の緑地公園「ハナミズキ野原」——電車で二駅、徒歩七分の、こじんまりとした芝生の広場だ。
前日から「何を作ろう」と考えていたくせに、当日の朝になると案外頭が真っ白になる。冷蔵庫を開けて、鶏むね肉と卵と大葉を見つけた瞬間、ようやく手が動き始めた。
まず作るのは、ヤンニョムチキン風の甘辛チキン。鶏むね肉を一口大に切り、塩と片栗粉をまぶしてフライパンで焼く。コチュジャン大さじ一、醤油大さじ一、はちみつ大さじ一、にんにくすりおろし少々を合わせたタレを絡めれば完成だ。火を通しすぎないのがコツで、しっとり感が野外で食べたときにちょうどいい。次に、だし巻き卵。卵三個に白だし小さじ一、みりん小さじ一を混ぜて、じっくり巻いていく。子どもの頃、母がこれを作るたびに台所の隅でかぶりついていたことを思い出す。あの頃はまだ、自分が作る側になるとは思っていなかった。
副菜はシンプルに。ブロッコリーを塩茹でして、プチトマトを洗って、ごま和えにしたほうれん草を小さな仕切りに収める。彩りを意識するだけで、弁当箱のなかがぐっと明るくなる。
さて、詰める段になって少し困った。今日使おうと思っていた二段の弁当箱が見当たらない。棚の奥を探したら、去年のピクニックで砂がついたまましまい込んだものが出てきた——ちゃんと洗ってあったけれど、なぜかふたが微妙に歪んでいる。結局、いつもの一段の大きめタッパーに全部詰め込んだ。まあ、これはこれで豪快でいいかもしれない。
保冷バッグに弁当と、麦茶のボトルと、北欧系のアウトドアブランド「フィールドノルド」のミニテーブルクロスを入れて、家を出た。
午前十時すぎ、ハナミズキ野原はすでに夏の光で満ちていた。芝草の青い匂いが鼻をくすぐり、遠くで子どもたちの声が弾んでいる。友人と遊ぶ場所として選んだここは、木陰がちょうどよく、風がわずかに通る。シートを広げた瞬間、友人がすっと麦茶のボトルを受け取ってくれた。その何気ない仕草が、なんだかとても自然で、嬉しかった。
野外でお弁当を食べる良さは、少し不便なところにある。箸が転がる、ナプキンが風で飛ぶ、でもそれすら笑いながら過ごせる。甘辛チキンを口に入れた瞬間、友人が「これ、お店で食べるやつより好きかも」と言った。お世辞だとしても、素直に嬉しい。
土曜日の昼下がり、木漏れ日が揺れるなかで食べるおべんとうは、どんな料理よりも少しだけ美味しい気がする。それは気のせいでも、錯覚でもなく、場所と人が加わったことで生まれる、本物の味だと思っている。
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**【簡単まとめレシピ】土曜日の野外おべんとう**
| メニュー | 所要時間 |
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| 甘辛ヤンニョムチキン | 約15分 |
| だし巻き卵 | 約10分 |
| ブロッコリー塩茹で+プチトマト | 約5分 |
| ほうれん草のごま和え | 約10分 |
**ポイント:** 前夜にチキンのタレを合わせておくと朝がラク。保冷剤は必ず入れ、夏の野外では食べるまで日陰で保管を。彩りを意識して詰めるだけで、気持ちも上がる。
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