木曜日のおべんとう、もう一息だから丁寧に。会社へ持っていきたい「照り焼きチキン弁当」

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朝、台所に立つと窓の外がもうじゅうぶん明るかった。七月の朝は早い。六時を少し過ぎたばかりなのに、すでに空が白く溶けていて、換気扇を回すと生ぬるい風が首元をかすめる。今日は木曜日だ。

木曜日というのは、週のなかで少し不思議な立ち位置にある。月曜の緊張も、水曜の中だるみも、もう過ぎた。でも金曜の解放感には、まだ届かない。あと一息、という感覚だけがある。そんな日だからこそ、会社へ持っていくおべんとうに、少しだけ気持ちを込めたくなる。

冷蔵庫を開けると、昨夜の残りの鶏もも肉がラップに包まれていた。それを見た瞬間、今日のおべんとうは照り焼きチキンにしようと決まった。むずかしいことは何もない。フライパンに油をひいて、皮目から中火で三分。ジュッという音と、甘辛いしょうゆの香りが台所に広がる。その香りがあまりにもよくて、思わず目を閉じた。子どものころ、母が同じにおいを漂わせながら台所に立っていたことを、ふと思い出した。あのころのおべんとうはいつも、蓋を開けるたびに少し嬉しかった。

鶏肉を裏返して、みりんと醤油と砂糖を合わせたたれを回しかける。ふたをして二分ほど蒸し焼きにすれば、中までしっかり火が通る。仕上げに少し強火にして、たれを絡めながらつやを出す。これだけだ。ブロッコリーは前日に塩ゆでしておいたものを使う。
2026年のトレンドとして、ブロッコリーはもはや彩りの脇役を超え、メインおかずとしても活用されている食材
らしいけれど、今日は小さな緑の塊として、弁当箱の端に静かに添えるだけにした。

卵焼きは、砂糖をほんの少しだけ。甘すぎると昼に食べたとき少し重い気がするから、だし巻き寄りに仕上げる。フライパンの端から端へ、三回に分けて巻いていく。最後の一巻きがいつもうまくいかなくて、今日もやっぱり少し崩れた。まあいいか、と心の中でつぶやく。見た目より、味だ(と、毎回自分に言い聞かせている)。

木曜日は「あと一息!上手に手抜きしたい」タイミング
だという記事を最近読んだ。確かにそうかもしれない。でも手抜きとていねいの間には、案外広い余白がある。照り焼きのたれを絡めるとき、弁当箱におかずを詰めるとき、その数分間だけ、今日の自分のことを少し思う。会社でデスクに座って、ひとり蓋を開ける昼の時間のことを。

弁当箱は「ハコモリ」という国産のブランドのものを使っている。木目調のフタが気に入って、去年の秋に買った。おかずを詰めるとき、色のバランスを考えながら配置する時間が、じつは好きだ。茶色の鶏肉、緑のブロッコリー、黄色い卵焼き。白いごはんの上に梅干しをひとつ。
「赤・黄・緑・茶・白」の色をそろえると、手間をかけなくても華やかなお弁当が完成する
というのは本当で、今日の弁当箱もなかなかいい感じに仕上がった。

蓋を閉めて、保冷バッグに入れる。保冷剤を上に乗せると、バッグの外側がひんやりする。七月の朝、その冷たさが指先に心地よかった。

会社へ向かう電車のなかで、バッグを膝の上に置いた。隣の席のひとがうとうとしながら、時折首をかくんと揺らしていた。なんだか微笑ましくて、窓の外に視線を戻す。車窓を流れる景色が、夏の光を反射してまぶしい。

昼になって、デスクの引き出しから弁当箱を取り出す。蓋を開けた瞬間、照り焼きのたれのにおいがふわっと漂う。冷めていても、鶏肉はやわらかくて、たれの甘辛さがしっかり染みていた。ブロッコリーを一口食べて、卵焼きを食べて、梅干しの酸っぱさに少し目が覚める。木曜日の昼。もう一息だ、と思う。

**【照り焼きチキン弁当 簡単レシピ】**

**材料(1人分)**
– 鶏もも肉:1枚(200g程度)
– しょうゆ:大さじ1.5
– みりん:大さじ1.5
– 砂糖:小さじ1
– ブロッコリー:3〜4房
– 卵:1個、砂糖・塩・だし少々
– ごはん・梅干し:適量

**作り方**
1. 鶏肉は常温に戻し、皮目から中火で3分焼く。裏返してフタをし2分蒸し焼き。
2. しょうゆ・みりん・砂糖を合わせたたれを加え、強火で絡めてつやを出す。
3. 卵焼きは卵を溶いて調味し、フライパンで3回に分けて巻く。
4. ブロッコリーは塩ゆで(前日仕込みでもOK)。
5. 弁当箱に色を意識しながら詰めて完成。
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