
日曜日の夜、キッチンの時計が21時を回るころ、ふと思い立つ。明日は月曜日だ。
なんとなく憂鬱な気持ちが漂う夜に、冷蔵庫を開けてみると、鶏もも肉が一枚、卵が三個、ブロッコリーの小房がいくつか、それだけが静かに並んでいた。材料はシンプルでいい。むしろそのほうがいい。今夜は、明日の会社に持っていくおべんとうに、少しだけ気合いを入れることにした。
子どもの頃、母が早朝に台所に立っていた。まだ外が薄暗い時間帯に、フライパンがじゅっと音を立てて、その音で目が覚めた朝が何度もあった。あの音と、みりんと醤油が混ざったような甘い香りは、なぜかいまでも月曜日の朝に思い出す。あの頃は当たり前だと思っていたけれど、今になって、あの一手間がどれほどのものだったかがわかる。
月曜日のおべんとうは、少しだけ丁寧に作りたい。それだけで、会社に向かう足取りが、ほんの少し軽くなる気がするから。
今回おすすめしたいのは、「鶏の照り焼きおべんとう」だ。作り方はとても簡単で、鶏もも肉に醤油・みりん・砂糖を各大さじ1の割合で合わせたタレを絡め、フライパンで皮目からじっくり焼くだけ。蓋をして蒸らすこと5分、最後に強火でタレを絡めれば、つやつやとした照り焼きの完成だ。卵焼きは、だし巻きにすると少し上品になる。だし汁を多めに加えて、ふわっと巻き上げるのがコツ。ブロッコリーは塩茹でで十分。彩りと栄養を、手間なく添えてくれる。
おべんとう箱は、「ハコモリ」というブランドの木製二段弁当箱を使っている。蓋を開けると、木の香りがふんわりと漂う。ご飯の水分をほどよく吸ってくれるので、昼どきに食べたときに米がべたつかない。会社の休憩室でそっと蓋を開けるとき、隣の席の同僚が「いい匂い」と顔を上げる、そのちょっとした瞬間が、なんだか好きだ。
ところで、先週の月曜日に少し失敗した。前夜に気合いを入れすぎて、おかずを詰め込みすぎたのだ。フタが閉まらないまま強引に押し込んだ結果、バッグの中でタレがじわっと滲み出て、ハンカチが照り焼き色に染まっていた。気合いの入れすぎには、ご注意を。
話を戻すと、月曜日のおべんとうが充実していると、不思議と午後の会議も乗り越えられる気がしてくる。昼休みに窓の外を見ながら、静かにおべんとうを食べるあの時間。初夏のいまごろは、窓から差し込む光が柔らかくて、弁当箱の照り焼きがきらりと光る。その小さな満足感が、午後の仕事への活力になる。
もし「月曜日は気力が出ない」と感じているなら、日曜の夜に少しだけ台所に立ってみてほしい。材料は三つか四つで十分。完璧じゃなくていい。ご飯を炊いて、一品だけ丁寧に作る。それだけで、翌朝の自分がちょっと違う顔をしている。おべんとうは、作る人の気持ちを映す。気合いを入れた分だけ、月曜日が少しだけ特別な一日になる。
会社に持っていくおべんとうは、誰かに見せるためのものじゃない。自分を、毎週月曜日に迎えに行くための、小さな儀式みたいなものだと思っている。
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