
朝、目が覚めた瞬間から「あ、水曜日だ」と気づく感覚がある。月曜でも金曜でもなく、週のちょうど真ん中。カーテンの隙間から夏の朝日が細く差し込んで、すでに空気がじんわりと温かい。7月の朝は早い。
会社に向かう電車の中で、なんとなく体が重い。月曜と火曜の疲れがじわじわと足首あたりに溜まってきている気がして、それでもあと2日あるという現実が、心にうっすらとのしかかる。
週の折り返しである水曜日は、疲れを感じながらも「踏ん張り時」という前向きな気持ちが同居する、不思議な曜日だ。
そんな日だからこそ、お昼のおべんとうに少しだけ力を入れてみたい。
実は昨晩、冷蔵庫の前で5分ほど立ち尽くしていた。豚こまと大葉、それから半端に残ったごまだれ。「これで何かできるかな」と考えながら、子どもの頃に母が作ってくれた梅しそ巻きのことをふと思い出した。運動会の朝、アルミのお弁当箱を開けると、ふわっと梅の酸っぱい香りが立ち上ったあの感じ。あれはたぶん、食べる前から元気をもらっていたのだと思う。
そこで作ったのが「豚こまの大葉ごまだれ巻き弁当」だ。名前はちょっと長い。でも、それくらい説明したくなるくらいおいしい。
作り方はシンプルで、豚こま肉を広げて大葉を1枚のせ、くるりと巻く。それをフライパンで転がすように焼いて、仕上げにごまだれと少しの醤油を絡めるだけ。火加減は中火で、肉の表面がきつね色になったら合図だ。香ばしい脂の音と、大葉が熱で少し萎れる瞬間の青い香りが台所に広がって、朝からなんだか得した気分になる。ごはんは前夜に炊いておいたものを、朝に軽くレンジで温め直す。ポイントは、詰めるときに少し冷ましてから蓋をすること。蒸気でべちゃっとなるのを防ぐためだ。副菜には、さっと塩揉みしたきゅうりと、めんつゆで和えたミニトマト。このふたつがあると、なんとなく弁当箱の中が「整って見える」から不思議である。
お弁当箱は、最近買ったウッドラインというブランドの杉材の曲げわっぱ風のもの。本物の木ではなくウレタン塗装なので手入れが楽で、でも見た目はちゃんと木の温もりがある。蓋を閉めると、なんとなく「今日のお昼が楽しみ」という気持ちになる。容器ひとつで、気分が変わるのはおもしろい。
会社の昼休み、デスクの隅でそっとお弁当箱を開ける。豚こまの巻き物は、冷めてもごまだれの香りがちゃんと残っていて、大葉のさわやかさがアクセントになっている。窓の外には真夏の青空が広がっていて、エアコンの風がすこし強い。冷たい空気の中で食べる、温度の落ち着いたお弁当というのは、それはそれで悪くない。
ちなみに今日、お弁当箱をバッグに入れるとき、蓋のロックを締め忘れていたことに電車の中で気づいた。そっとバッグを覗くと、ごまだれが少しだけ漏れていた。ハンカチで拭いて、見なかったことにした。水曜日あるある、かもしれない。
週の折り返しを乗り越えるために、特別なことは何もいらない。ただ、お昼に「今日はこれが食べたかった」と思えるものが入っていれば、それだけで午後の仕事がすこし軽くなる気がする。おべんとうというのは、自分で自分をねぎらう、いちばん小さくて確かな方法なのかもしれない。
水曜日に、おいしいものを。それだけで、週の後半はきっとうまくいく。
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