土曜日の朝、友人と野外へ。持っていきたいおべんとうの話

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前の晩から、なんとなく気持ちが浮き立っていた。

土曜日の朝というのは、不思議なものだ。平日と同じ時間に目が覚めても、光の質がどこかちがう。カーテンの隙間から差し込む夏の朝の陽が、畳の上にうすく白く伸びていて、それだけで「今日は特別な日だ」と体が知っている。

友人のユカと、野外でのんびりしようと決めたのは、三日前のことだった。「どこか緑のある公園で、お昼ごはん食べようよ」という、ただそれだけの約束。でも、その「ただそれだけ」が、妙にわくわくする。

せっかくだから、おべんとうを作ろうと思った。

冷蔵庫を開けると、昨日の夜に買っておいた鶏もも肉と卵、それからミニトマトが並んでいた。夏場のお弁当は傷みが気になるから、しっかり火を通すおかずを中心にする。今回選んだのは、三品。①甘辛チキン、②だし巻き卵、③枝豆の塩ゆで。シンプルだけど、彩りがいい。

**甘辛チキンの作り方**は拍子抜けするほど簡単だ。鶏もも肉を一口大に切り、醤油・みりん・砂糖を同量ずつ合わせたタレに10分ほど漬けておく。あとはフライパンで皮目からしっかり焼いて、タレを絡めながら照りが出るまで中火で煮詰めるだけ。香ばしい匂いがキッチンに広がって、朝から食欲が全開になる。

**だし巻き卵**は、卵3個にだし大さじ2、醤油と砂糖を少々加えて、巻き巻きするだけ。コツは弱火でゆっくり。急ぐと卵がぼこぼこになる。……実はこの日も少し急いでしまって、端っこが少し崩れた。でも、まあ、味は変わらない。お弁当箱に入れてしまえば誰にもわからない(と、自分に言い聞かせた)。

ご飯は酢飯にした。白米に少量のすし酢を混ぜるだけで、夏でも傷みにくくなるし、さっぱりして食べやすい。

詰め方にも少しこだわった。愛用しているのは、「ハコニワ」というブランドの木製の曲げわっぱ。蓋を開けたとき、ほんのりと木の香りが漂う。ご飯を詰めて、チキン、卵、枝豆と順番に並べると、緑・黄・茶の色が重なって、思ったよりずっとかわいくなった。ミニトマトを隙間に押し込んで、完成。

待ち合わせは、市内の「城南緑地公園」の噴水前。10時に集合。

ユカは、麦わら帽子をかぶって現れた。手には冷たいペットボトルを二本持っていて、「暑いから先に買っといた」と渡してくれた。その仕草が、なんでもないのに嬉しかった。

芝生の上にレジャーシートを広げると、草の匂いと土の匂いが混ざったような、夏らしい空気が鼻をついた。木陰に入ると、風がすうっと通り抜けて、汗ばんだ肌に気持ちいい。遠くで子どもたちが水遊びをしている声が聞こえた。

お弁当を開けると、ユカが「わ、かわいい」と言って、スマホを取り出した。写真を撮りながら「これ全部作ったの?」と聞いてくる。うん、と答えながら、内心では「端っこ崩れてるから早く食べてほしい」と思っていたのは、ここだけの話である。

野外で食べるごはんは、なぜこんなにおいしいのだろう。同じものを家で食べても、きっとこうはならない。風のせいか、光のせいか、それとも一緒にいる人のせいか。たぶん、全部が混ざり合っているのだと思う。

友人と遊ぶ約束があるだけで、金曜日の夜が少し楽しくなる。お弁当を作る土曜日の朝が、特別になる。野外で食べるお昼が、記憶に残る。

そういう小さな積み重ねが、日常をちょっとだけ豊かにしてくれる気がして、帰り道、空のお弁当箱を揺らしながら、また作ろうと思った。
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