月曜日のおべんとうに気合いを入れる。それだけで、一週間が変わる気がした。

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目覚ましが鳴るより少し前に、目が覚めてしまう月曜日がある。カーテンの隙間から入る七月の朝の光は、まだやわらかいようで、じつはもうじゅうぶん夏だ。額にうっすら汗をかいたまま、ぼんやりと天井を見上げて、ふと思う。「今日、何を持っていこう」と。

会社に持っていくおべんとうのことを、朝に考えるようになったのはここ半年ほどのことだ。それまでは近くのコンビニで済ませていたし、それで特に困ってもいなかった。でも、ある月曜日の昼休み、同僚の田中さんが木製のお弁当箱をそっと机に置いて、蓋を開けた瞬間に漂ってきた出汁の香りが、なんとなく忘れられなくて。「自分で作ったの?」と聞いたら「ちょっとだけ気合い入れてみた」と言いながら、彼女は照れくさそうにお箸を持ち直していた。その仕草が、ちょっとだけ胸に刺さった。

月曜日に気合いを入れておべんとうを作ると、なぜか一週間のリズムが整う気がする。これは気のせいではないと思っている。月曜日の昼に、自分で作ったものを食べるという行為が、「今週も自分のペースでやっていこう」という小さな宣言になるのかもしれない。会社のデスクで、少し冷めたご飯を一口食べるだけで、妙に落ち着くのだ。

子どもの頃、母が毎週月曜日だけ特別においしいおかずを入れてくれていた。「月曜日は元気が要るから」と言っていた。当時はあまりわかっていなかったけれど、今になってその意味が腑に落ちる。あの卵焼きの、甘くて少しだけ焦げた端っこの味が、なんとなく今でも「月曜の朝」の匂いとして記憶に残っている。

さて、実際に作るとなると、どんなおべんとうがいいのか。ここでひとつ提案したいのが、「鶏そぼろと彩り野菜の二色おべんとう」だ。前日の夜、十五分もあれば準備できる。鶏ひき肉をフライパンで炒め、醤油・みりん・砂糖を各大さじ一で味付けするだけ。それをご飯の半分に乗せ、残り半分には炒り卵を敷く。隙間に茹でたブロッコリーとミニトマトを詰めれば、色のバランスが自然と整う。冷めても味が落ちにくいのが、このおかずの頼もしいところだ。

ポイントは、お弁当箱をあらかじめ冷やしておくこと。夏場は特に、詰めてすぐ蓋をしないこと。粗熱が取れてから蓋をするだけで、翌朝まで品質が保ちやすくなる。それから、少し深めのお弁当箱を使うと、見た目よりもたっぷり入って満足感が増す。架空のインテリア雑貨ブランド「ハコノハ」が出しているような、杉材のシンプルな曲げわっぱ型の容器があれば、それだけで気分が上がる。道具が変わると、作る気持ちも変わるのだから不思議だ。

もう少し時間に余裕があるときは、前夜の夕食を少し多めに作っておくのがいい。きんぴらごぼうや、ひじきの煮物は、翌朝そのまま詰めるだけで立派なおかずになる。「作り置き」という言葉が少し重たく感じる人は、「夕食のついで」と思えば気が楽になる。実際わたしも、昨晩の肉じゃがをそのまま持っていったら、同僚に「すごい手が込んでる」と言われて、心の中で「いや、昨日の残りです」とひっそりツッコんだことがある。それはそれで、ちょっとうれしかった。

七月の朝、キッチンに立つ。冷蔵庫を開けた瞬間のひんやりとした空気が、まだ眠たい顔に当たる。前夜に用意しておいたそぼろを詰め、卵を炒める音が静かな台所に広がる。その音だけが、月曜の朝の、いちばん正直な音だと思う。

おべんとうを持って会社に向かう月曜日は、少しだけ背筋が伸びる。気合いを入れるというのは、大げさなことじゃなくていい。ただ、前日の夜に十五分だけ台所に立つこと。それだけで、一週間の入り口が、ほんの少し明るくなる。
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