
目が覚めたとき、カーテンの隙間から差し込む光がいつもと少し違う色をしていた。金曜日でも土曜日でもない、あの独特のやわらかさ。そう、日曜日の朝の光だ。
子どもの頃、日曜日の朝はなぜかいつも特別だった。父が台所でごそごそと音を立てて、母が「今日はどこか行く?」と聞く。その問いに答えが返ってくる前に、もう心はどこか遠い野原にいた。あの感覚が、大人になったいまも抜けない。だから秋の晴れた日曜日には、どうしても外に出たくなる。
今年の10月、久しぶりに家族で近くの「みなもと緑地公園」へ行くことにした。電車で二駅、歩いて十分ほどの小さな公園だけれど、イチョウ並木が黄金色に染まるこの季節だけは、別の場所みたいに見える。落ち葉を踏む音、乾いた土の匂い、頬に触れる風のひんやりとした感触。五感がいっせいに秋を受け取る瞬間が好きで、毎年この時期を楽しみにしている。
そして、野外に出るならやっぱりおべんとうだ。
レストランも悪くないけれど、青空の下でひらくお弁当箱には、それだけで気持ちが上がる何かがある。今回は前日の土曜日の夜から少しだけ仕込みをして、日曜日の朝に仕上げる「秋の野外おべんとう」を作った。
メインは鶏むね肉の甘辛チキン。片栗粉をまぶしてしっかり焼くことで、冷めてもやわらかさが残る。醤油・みりん・砂糖・おろしニンニク・おろし生姜を合わせたタレに絡めるだけで、味が深くなる。これを前日の夜に漬け込んでおけば、朝は焼くだけで完成する。副菜には、にんじんのおかか和えとブロッコリーのコンソメバター炒め。彩りを意識して、緑とオレンジを必ず入れるようにしている。お弁当箱の中が茶色一色にならないよう、野菜の色を意識するのがポイントだ。ご飯は混ぜ込みおにぎりにした。ゆかりと白ごまを混ぜてにぎるだけ。子どもでも食べやすいし、手が汚れにくいのが野外向きでいい。
作り方をざっくりまとめると、こうだ。
【甘辛チキンの手順】鶏むね肉を一口大に切り、塩・胡椒・片栗粉をまぶす。フライパンに油を熱して両面をこんがり焼き、合わせ調味料を加えて絡める。仕上げに炒りごまをふれば完成。時間にして15分ほど。
公園に着いたのは午前11時過ぎ。イチョウの葉がちょうど風に揺れていて、光が葉の隙間からまだらに落ちていた。レジャーシートを広げ、持参した保温ボトルに入れた「ほうじ茶ラテ」を注ぐ。架空のブランドでも何でもない、うちの定番の飲み物だ——などと思いながら、実はこれ、近所の雑貨兼カフェ「トリコロール・ストア」で買ったオリジナルブレンドのティーバッグを使っている。ほんのりキャラメルのような甘い香りが漂って、秋の空気とよく合う。
子どもがお弁当箱のふたをあけた瞬間、「わあ」と声をあげた。その小さな「わあ」のために、朝早く起きて作ったのだと思う。
夫がおにぎりを一口食べながら「これ、昨日のより美味しくない?」と言った。昨日は特に何も作っていない。たぶん気のせいか、あるいは外の空気のせいだろう。心の中で軽くつっこみながら、まあそういうことにしておこうと思った。
家族で過ごす野外のごはんは、料理の腕前よりも、その場の空気が味を決める気がする。風の音、子どもの笑い声、温かい飲み物を渡しあう手の温もり。そういうものが全部まとまって、ひとつのおべんとうになる。
日曜日のお弁当は、箱の中身だけじゃない。その日の光も、誰かと過ごした時間も、一緒に詰まっている。
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