土曜日の午前10時に仕込む、友人と遊ぶ野外おべんとうのすすめ

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土曜日の朝は、なんとなく空気が違う。平日の張り詰めた静けさとは違って、どこかゆるやかで、少しだけ甘い匂いがする気がする。キッチンに立つと、窓から差し込む光がまだ低くて、まな板の上に白くのびていた。そんな朝に、わたしはいつもお弁当を作りたくなる。

友人と遊ぶ約束をしたのは、三日前のことだった。「どこか外でごはんしようよ」という軽いメッセージから始まって、気づいたら「じゃあお弁当持って公園にしよう」という話になっていた。最寄りの駅から歩いて十五分ほどのところにある、緑ヶ丘中央公園。そこには大きなクスノキが何本も並んでいて、梅雨の晴れ間には木漏れ日が芝生に落ちて、なんとも言えない柔らかな明るさになる。野外でごはんを食べるには、少し風が吹いていて、日差しがほどよく遮られているくらいがちょうどいい。

お弁当箱を引っ張り出しながら、ふと子どもの頃を思い出した。遠足の前夜、母が台所で黙々と卵焼きを巻いていた姿。あの黄色が妙に鮮やかで、朝になって開けるのが楽しみで、でも実際に食べるより「開ける瞬間」の方が好きだったかもしれない。今でもそれは変わっていない。

今回作るのは、シンプルだけど少しだけ気の利いたメニューにしようと決めた。主役は「梅しそ鶏そぼろの二色ごはん」。炊きたてのご飯に、甘辛く炒った鶏ひき肉と、梅干しと大葉を刻んで混ぜたさっぱりご飯を半分ずつ詰める。隣には、だし巻き卵、塩ゆでしたスナップエンドウ、ミニトマト。それだけ。飾らないけれど、彩りがちゃんとある。

作り方はとても簡単だ。鶏ひき肉150gをフライパンに入れ、酒・みりん・醤油を各大さじ1、砂糖小さじ1を加えて炒り煮にする。水分が飛んだら完成。梅しそご飯は、梅干し1個をたたいて、大葉3枚をせん切りにし、温かいご飯に混ぜるだけ。だし巻き卵は、卵2個に白だし小さじ2、水大さじ1を合わせて、フライパンで三回に分けて巻く。慣れないうちは形が崩れるけれど、それもご愛嬌だ。実際、今日も一本目は見事に崩れた。心の中で「また失敗したか」とつぶやきながら、崩れた卵をそっとつまんでそのまま口に入れた。味は完璧だったので、まあいいとする。

保冷バッグに詰めて、架空のアウトドアブランド「VERDE CESTO(ヴェルデ・チェスト)」の麻素材のランチクロスで包む。これが意外と大事で、ちゃんと包んであるだけで、野外で開けたときの気持ちが全然違う。

公園に着くと、友人がもうベンチに座って待っていた。「遅い」と言いながら、わたしがバッグを開けるのをじっと見ていた。その視線がなんとなく嬉しくて、少し急いでお弁当箱のふたを開けた。梅雨明け前の六月の空気は少し湿っていたけれど、クスノキの葉が揺れるたびに、青くて涼しい匂いが流れてきた。

「なにこれ、ちゃんとしてる」と友人が言った。ちゃんとしてる、という言葉が、褒め言葉なのかどうか一瞬迷ったけれど、箸を伸ばす手の速さを見れば答えは明らかだった。

土曜日の野外でのごはんは、どんなに素朴なものでも、なぜかいつもより美味しく感じる。それは光のせいかもしれないし、風のせいかもしれないし、一緒に食べる人のせいかもしれない。たぶん全部が少しずつ関係していて、そのどれか一つが欠けても、あの味にはならないのだと思う。

友人と遊ぶ日のお弁当は、凝りすぎなくていい。ただ、少しだけ丁寧に作ること。それだけで、土曜日の午前中がちゃんと「特別な時間」になる。
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