日曜日の野外おべんとう――家族と過ごす、小さくて大切な時間

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夏の朝は、音から始まる。

カーテンの隙間から差し込む光が畳の上に細長い縞を描いていて、どこかの庭先でセミがもう全力で鳴いている。時計を見ると、まだ七時を少し過ぎたところ。日曜日の朝だというのに、なぜか自然と目が覚めてしまうのは、きっと今日が特別な日だからだと思う。

前の晩から決めていた。家族で野外へ出かけて、お弁当を広げようと。

子どもの頃、母が作ってくれたお弁当のことを思い出す。タコさんウインナーが必ず入っていて、卵焼きは甘くて、ごはんにはごまが散らしてあった。あの黒いごまの粒を数えながら食べていたことを、ふとした拍子に思い出す。特別においしいわけではなかったかもしれないけれど、なぜかあの味だけは、今でも舌の奥に残っている気がする。

冷蔵庫を開けて、食材を並べる。鶏もも肉、ブロッコリー、卵、ミニトマト。それから昨夜の残りのきんぴらごぼう。完璧な献立ではないけれど、「あるもので作る」のがお弁当の醍醐味だと、今はそう思っている。

まず、鶏の唐揚げから取りかかる。醤油・みりん・すりおろし生姜を合わせたタレに鶏肉を漬け込み、片栗粉をまぶして揚げる。油がじゅわっと跳ねる音と、香ばしいにおいがキッチン全体に広がっていく。子どもが「なにか揚げてる!」と廊下から声をかけてくる。そうそう、この瞬間のために作っているのだ。

卵焼きは、だし巻き風に。卵三個に白だしを少し、砂糖はほんの一つまみ。フライパンを傾けながら、くるくると巻いていく。うまく巻けた日とそうでない日があって、今日は少し端が破れてしまった。まあ、蓋を開けるまでのお楽しみということにしておこう。

ブロッコリーは塩ゆでにして、ミニトマトはそのまま。きんぴらごぼうを小さな仕切りカップに移して、唐揚げをどんと真ん中に置く。ごはんはおにぎりにした。梅干しと、昆布。子どもの分には、ちっちゃなのりで顔を作ってみた。目がちょっとずれて、なんとも言えない表情になったけれど、それもまたかわいい。

お弁当箱は、以前から気に入って使っている「ハコニワ」というブランドのもの。木目調のふたが清潔感があって、野外で開けたときに映える。見た目にもこだわりたいのは、お弁当が「食べる前から楽しい」ものだから。

出かけたのは、自宅から自転車で十五分ほどの川沿いの公園。川のせせらぎが聞こえる木陰にシートを広げると、風がすうっと通り抜けていった。八月の日差しは強いけれど、木の下はひんやりとしていて、肌にあたる空気がやわらかい。子どもが早速シートの端をめくって遊び始めて、夫がそれを直して、また子どもがめくる。その繰り返しを横目に見ながら、保冷バッグからお弁当を取り出した。

「いただきます」の声が揃って、ふたを開ける。

「わあ」と子どもが言った。それだけで、もう十分だと思った。

唐揚げをひとつ口に入れると、外はカリッと、中はじゅわっと肉汁が広がる。川の音を聞きながら食べる唐揚げは、なぜかいつもより三割増しでおいしく感じる。気のせいではないと思う。夫が無言で二個目に手を伸ばしていた。

子どもが「おにぎりの顔、こわい」と言った。それはそれでウケたので良しとする。

野外でのお弁当は、家の食卓とは少し違う時間が流れる。話すことも特にないのに、なんとなくみんなが同じ方向を向いていて、川の流れを目で追いながら食べている。家族という単位が、こういう場所でいちばん自然な形になる気がする。日曜日にしか生まれない、やわらかい空気がある。

食べ終わって、子どもが川縁で石を拾い始めた。夫がうとうとしていた。シートの上で半分目を閉じながら、それでも子どもの方向を向いている。そういう横顔を見ていると、日曜日というのは、こういうためにあるのだと思う。

お弁当を作るのに、特別な技術はいらない。前の日の残りものでいい。少しだけ丁寧に詰めれば、それだけで十分だ。大切なのは、誰かのために作るという、その気持ちのほうだから。
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