
目が覚めたとき、カーテンの隙間から光がまっすぐ差し込んでいた。夏の朝特有のあの感じ、空気がまだ少し柔らかくて、でも窓ガラスはすでに熱を帯びている。時刻は七時を少し回ったところ。今日は日曜日だ。
子どもが「公園行きたい」と言ったのは、前の晩のことだった。寝る前に布団の中からそう言って、返事を聞く前にもう目を閉じていた。こちらはまだ何も準備していないのに、子どもというのはいつもそういうものだ。でも、それがなんだかいい。
冷蔵庫を開けると、昨日の夜に茹でておいたブロッコリーと、半端に残った卵が四つ。あとは鶏のもも肉が一枚。なんとかなる、と思いながらフライパンを火にかけた。油が温まる音、ジュッという小さな音が台所に広がる。醤油とみりんを合わせた甘辛いたれで鶏肉を焼いていると、だんだん香ばしい匂いが部屋に漂ってきた。この匂いで家族が起きてくるのは、毎回のことだ。
おべんとうの中身はシンプルでいい。鶏の甘辛焼き、だし巻き卵、ブロッコリーの塩ゆで、それから白いご飯をぎゅっと握ったおにぎり。具は梅干しと、子どものリクエストのツナマヨ。ラップで包んでお弁当箱に並べると、思いのほかきれいに収まった。ちなみに今回使ったのは「グリーンフォレスト」というアウトドアブランドの木製トレー付きランチボックスで、蓋を開けたときの見た目がなんとも気持ちいい。
お弁当といえばおにぎり、というのは少し古いイメージかもしれないけれど、野外で食べるなら手で持てるものが一番だと、個人的にはやっぱり思う。
外の風の中で、ラップを開く感触、冷めても美味しいおにぎりのあのもちっとした重さ。それだけで、どこか特別な気持ちになる。
公園に着いたのは九時半ごろ。木陰のベンチに荷物を下ろして、レジャーシートを広げた。子どもはもうすでに走り出している。夫がシートの端を踏みながら「ここでいい?」と聞いてくる。踏んでいるから広がらないのだけど、本人は気づいていない。そういうところが、なんとも言えず微笑ましい。
外で食べるご飯は、何だか美味しく感じる。いつもと違うからワクワク感があって、美味しさが増すのかもしれない。
それは本当にそうだと思う。同じ鶏の甘辛焼きでも、風の音と一緒に食べると、なんだか違う料理みたいだ。
子どもが走り回ってひとしきり疲れたころ、シートの上に戻ってきた。汗でほっぺが赤くなっている。「おなかすいた」と言いながら、おにぎりに手を伸ばす。その仕草が、なんだか小さいころと変わらない。幼稚園の遠足で、同じように草の上に座って、同じようにおにぎりを頬張っていた。あのときのお弁当箱は青くて、アルミの蓋がぴったりはまらなくて、いつも中身がちょっとずれていた。
家族で野外に出かけるとき、おべんとうがあるとないとでは、時間の密度が変わる気がする。食べるという行為が、場所に根を張らせてくれるというか。ただ通り過ぎるだけじゃなくて、ここにいた、という感覚を残してくれる。
簡単な作り方をまとめておくと、鶏の甘辛焼きは鶏もも肉を一口大に切り、醤油・みりん・砂糖を各大さじ1で炒め焼きするだけ。だし巻き卵は卵2個に白だし小さじ1、砂糖少々を混ぜて巻くだけでいい。どちらも前夜に作っておけば、朝の時間がぐっと楽になる。ブロッコリーは塩ゆでして水気をしっかり切ること、それだけが唯一の注意点だ。
冷めても美味しく、簡単に作れるレシピを選ぶことが、ピクニックお弁当を成功させる鍵だ。
手の込んだものより、シンプルで素材の味が立つものの方が、外の空気の中では映える。
日曜日の午前中、風が草を揺らす音を聞きながら、家族と同じものを食べる。それだけのことが、ずいぶん長いあいだ記憶に残ったりする。お弁当を作ることは、そういう時間を手渡すことだと、今日もまた思った。
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