火曜日の会社においしいおべんとうを。がんばるぞ、を支える小さな幸せ

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梅雨の入り口、6月の火曜日の朝というのは、なぜかとりわけ長く感じる。月曜日の疲れがじんわり残っていて、かといって週の折り返しにもまだ届いていない。窓の外はどんよりとした鉛色の空で、アスファルトが昨夜の雨をまだ引きずっていた。そういう朝に、キッチンに立つ。

今日は会社におべんとうを持っていこう、と思い立ったのは前の晩のことだった。特別な理由があったわけではない。ただなんとなく、「がんばるぞ」という気持ちを、自分で自分に贈りたかった。子どもの頃、母がお弁当箱のふたを開けるたびにふわりと漂ってきたあの甘辛い醤油の香りを、ふと思い出したのかもしれない。あの頃は、お弁当があるだけで午前中が少し軽くなった気がしていた。

冷蔵庫を開けると、鶏もも肉が一枚、卵が三つ、ブロッコリーの残りがあった。よし、これで十分だ。フライパンに油をひいて、鶏もも肉に醤油・みりん・酒を各大さじ1、砂糖小さじ1を合わせたたれをからめて中火で焼く。皮目からじっくり焼くのがコツで、パチパチと弾ける音と、甘辛い蒸気が鼻をくすぐる。照りが出てきたら裏返して蓋をして3分。これだけで立派なメインおかずになる。卵焼きは、卵2個に薄口醤油少々と砂糖ひとつまみを混ぜて、フライパンで三つ折りに。ブロッコリーは耐熱容器に入れてラップをかけ、電子レンジで1分半チン。塩をひとふりするだけで、鮮やかな緑がお弁当箱を彩ってくれる。

ここで少し正直に言うと、今朝は卵焼きをひっくり返すタイミングを一瞬ためらって、端がちょっとだけ焦げた。形も若干いびつだ。でもまあ、味に変わりはない。「味は同じ」と自分に言い聞かせながら、そっとお弁当箱の隅に収めた。誰も見ていないのに、なぜか少し恥ずかしかった。

詰める順番も、実はちょっとした技術がいる。まずご飯をふんわりよそって、仕切りを置いてから主菜、副菜と並べていく。色のバランスを意識するだけで、見た目がぐっと変わる。茶色、黄色、緑。そのコントラストが、開けたときの小さな喜びになる。お気に入りの「ナチュラルボックス・ヒュッゲ」というブランドの木目調のお弁当箱に詰めると、なんだかカフェのランチみたいに見えて、それだけでちょっと得した気分になれる。

会社に着いて、昼休みにお弁当箱を開けた瞬間のことを想像しながら、ふたを閉める。隣の席の同僚がいつも「コンビニでいいや」と言いながら、ふとこちらのお弁当を覗いて「いいな」とつぶやくあの顔を、なんとなく思い浮かべた。

火曜日は、そういう小さな「いいな」を積み重ねる日にしたい。週の真ん中に向かう途中で、自分を少しだけ丁寧に扱う日。がんばるぞ、の気持ちは、誰かに宣言するより、お弁当箱のふたの中に静かに詰めておくほうが、長持ちする気がする。

お弁当を持って家を出ると、雨上がりの空気が少しだけ軽くなっていた。アスファルトの水たまりに、薄い青空が映っていた。今日も、いい一日になりそうだ。
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