月曜日のおべんとうに気合いを入れる、それだけでいい。

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梅雨の手前、六月の朝はまだ少しだけひんやりしている。窓を開けると、どこかの庭から金木犀ではなく、雨上がりの土と草の混じったような、名前のつけにくい匂いが流れてきた。月曜日の朝、6時15分。台所に立つ。

この時間が、一週間のなかで一番好きだと気づいたのは、最近のことだ。正確に言えば、お弁当を作り始めてからだと思う。会社に持っていくお弁当。誰かのためではなく、自分のための。それがなんとなく、月曜日の朝を変えた。

子どものころ、母が作ってくれた卵焼きは甘くて、出汁の香りがして、フライパンの端がすこし焦げていた。あの焦げが好きだった。完璧じゃないのに、なぜかおいしかった。自分で作るようになって初めて、あの「すこし焦げ」がどれだけ難しいかを知った。狙って焦がそうとすると、なぜか焦げない。人生みたいだな、と思いながら今日もフライパンを火にかける。

月曜日だから、気合いを入れる。といっても大げさなことはしない。ご飯を少しだけ丁寧に炊いて、おかずを三品、ちゃんと作る。それだけのことだ。

今日のメニューはこう。鶏の照り焼き、だし巻き卵、ほうれん草のごまあえ。シンプルだけれど、この三つが揃うと、なんとなくお弁当箱の中が整って見える。色のバランスが、茶と黄と緑。地味といえば地味だけれど、これが好きだ。

**【簡単な作り方メモ】**

鶏の照り焼きは、鶏もも肉を一口大に切って、醤油・みりん・酒を同量ずつ合わせたタレで焼くだけ。弱めの中火でじっくり焼いて、最後に強火でタレを絡める。焦げやすいので、目を離さないこと。

だし巻き卵は、卵2個に対してだし大さじ2、醤油ひとつまみ、みりんすこし。混ぜすぎず、三回に分けて巻く。最初の一巻きを失敗しても、気にしない。どうせ中に隠れる。

ほうれん草のごまあえは、茹でて水気を絞ったほうれん草に、すりごま・醤油・砂糖を和えるだけ。前日の夜に作っておくと、朝がぐっと楽になる。

お弁当箱は、最近「ハコノワ」というブランドの木製のものを使っている。ネットで見つけた小さなブランドで、蓋を開けるときの音がかすかにコトッとして、それが妙に気持ちいい。会社の昼休み、その音を聞くたびに「ああ、今日の朝、ちゃんと作ったな」と思う。

月曜日にお弁当を持っていくと、なんとなく午後の会議も乗り越えられる気がする。根拠はない。でも、朝の15分を自分のために使った、という事実が、どこかで背中を押してくれる感じがするのだ。

ちなみに今朝、だし巻き卵を巻いている最中に、フライパンの柄に腕が当たって卵が少しよれた。「あ」と思ったけど、そのまま続けた。お弁当箱に詰めてしまえば、誰にもわからない。自分だけが知っている、今日の小さな秘密。

六月の月曜日の朝、台所に立つ。お弁当箱の蓋を閉める。それだけで、今週が少しだけ、やさしく始まる気がした。
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