
朝、目が覚めたとき、カーテンの隙間からやわらかい光が差し込んでいた。ああ、晴れている。それだけで、なんとなく今日が特別な一日になる予感がした。日曜日の朝というのは、不思議なほど静かで、空気まで少しちがう色をしているように感じる。
「今日、どこか行こうか」と夫が言ったのは、コーヒーを淹れながらのことだった。マグカップをそっとテーブルに置くその仕草を見て、私は「じゃあ、おべんとう作る」と即答していた。子どもたちはまだ眠っていたけれど、台所に立つとすぐに気配を察したのか、パタパタと足音が聞こえてくる。家族というのは、そういうものだ。
冷蔵庫を開けて、あるものを確認する。卵、鶏もも肉、ブロッコリー、ミニトマト。前日に炊いておいたご飯もある。よし、十分だ。まず鶏肉に塩こしょうをして、皮目からフライパンに置く。じゅわっと脂が溶ける音と、香ばしい匂いが台所に広がる瞬間が、私はひそかに好きだ。子どもの頃、母が日曜日の朝に唐揚げを揚げていて、その匂いで目が覚めた記憶がある。あの感覚に、今の自分が少しだけ重なる。
鶏肉に醤油・みりん・はちみつを合わせたたれを絡めて、照り焼きにする。これがこのおべんとうの主役。ブロッコリーは塩ゆでして、卵は甘めの出汁巻き卵に。ミニトマトは洗うだけでいい。あとはご飯をぎゅっとおにぎりにして、黒ごまをぱらりと散らす。おべんとう箱は、去年アウトドアショップ「グリーンネスト」で見つけた、木目調の二段重ねのもの。蓋を開けたときに「わあ」と言わせたくて選んだ、お気に入りだ。
詰め終わって、ふと気づく。卵焼きが少し斜めに傾いている。直そうとしたら余計に崩れた。まあ、味は変わらない。そういうことにしておく。
出発したのは十時すぎ。車で二十分ほどの「みなみ野緑地公園」は、秋の今ごろ、ケヤキの葉が黄色く色づきはじめる。風が吹くたびに、はらはらと葉が舞い落ちて、地面がやわらかい絨毯のようになっている。子どもたちは走り出し、夫は大きなレジャーシートを広げる。私はその隣に座って、少しだけ目を閉じた。草の匂い、遠くで子どもが笑う声、木の葉がこすれる乾いた音。日曜日の野外というのは、こんなにも豊かだったか。
「お腹すいたー!」という声で、おべんとうの時間がやってくる。蓋を開けると、斜めになった卵焼きがそのままだった。でも子どもたちは気にしない。照り焼き鶏を一口食べて「おいしい」と言う。その一言で、朝の台所仕事がぜんぶ報われる気がした。家族で外に出て、同じものを食べる。それだけのことが、なぜこんなに満たされた気持ちになるのだろう。
帰り道、後部座席の子どもたちはうとうとしていた。シートベルトをしたまま、ふたりして首をかくんと傾けている。夫がバックミラーで確認して、小さく笑った。私も笑った。声には出さずに。
おべんとうを作ることは、特別なことじゃない。でも、日曜日の朝に少し早起きして、家族のために詰める時間は、じわりと温かい。野外で食べるから、いつもより少しだけおいしい。そういう小さな積み重ねが、家族の記憶になっていくのだと思う。
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**【今回のおべんとうレシピ:照り焼き鶏のおべんとう】**
**材料(2〜3人分)**
– 鶏もも肉:1枚
– 醤油・みりん・はちみつ:各大さじ1
– 卵:3個、砂糖:小さじ2、だし:大さじ2
– ブロッコリー:適量、ミニトマト:適量
– ご飯:2合、黒ごま:少々
**作り方**
1. 鶏もも肉に塩こしょうをして、皮目からフライパンで焼く。
2. 火が通ったら醤油・みりん・はちみつを合わせたたれを加え、照りが出るまで絡める。
3. 卵・砂糖・だしを混ぜて出汁巻き卵を作る。
4. ブロッコリーは塩ゆでする。
5. ご飯を俵型に握り、黒ごまを散らす。
6. おべんとう箱に彩りよく詰めて完成。
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