火曜日のおべんとう、それだけで会社に行ける理由

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月曜日の夜は、なんとなく気が重い。でも、火曜日の朝に台所へ立って、冷蔵庫を開けた瞬間から、気持ちがすこしだけ変わる。ぱかっと扉を開けると、昨夜のおかずの残りと、卵と、ちょっと萎れかけた小松菜が目に入る。これで、今日のおべんとうができる。それだけで、なんとなく「がんばるぞ」という気持ちが湧いてくるから不思議だ。

火曜日というのは、週の中でも少し特別な日だと思っている。月曜日の緊張がほどけて、でもまだ週の折り返しにも届いていない。ちょうど中途半端なその日に、手作りのおべんとうを持って会社へ向かうことが、自分なりのリズムになっていた。

秋の朝、台所の窓から差し込む光は、夏のそれとは明らかに違う。白くて、少し斜めで、フライパンの縁に反射してきらりと光る。外の空気はひんやりしていて、換気のために少し開けた窓から、金木犀のかすかな香りが漂ってくる。ああ、もうこんな季節になったのか。そんなことを思いながら、卵を割る。

今日のおべんとうのメインは「鶏のみそ照り焼き」にした。作り方はとても簡単で、鶏もも肉に酒・みりん・みそ・砂糖を合わせたタレを絡めて、フライパンで蓋をして中火で蒸し焼きにするだけ。タレが焦げないように火加減だけ気をつければ、あとは10分もあれば完成する。香ばしいみそと甘辛いタレの香りが台所に広がると、朝からお腹が鳴る。ちなみに今朝は少し焦がしかけた。蓋を開けた瞬間、うっすら煙が立ち上がって思わず「あっ」と声が出た。誰も見ていないのに、なんとなく恥ずかしかった。

副菜は小松菜のごま和えと、卵焼き。卵焼きは出汁と砂糖を少し入れて甘めに仕上げる。子どもの頃、母が作ってくれた卵焼きがいつも甘くて、お弁当箱を開けるたびにそれが一番楽しみだった。あの頃は当たり前すぎて気にも留めなかったけれど、今こうして自分で作ると、あの甘さを再現するのがなかなか難しいと気づく。砂糖の量が少し多いかな、と思いながら巻いた今日の卵焼きは、少しいびつな形になった。まあ、いい。

ご飯は白米に黒ごまをふって、梅干しをひとつ。おかずとご飯をきっちり詰めたら、蓋を閉める。使っているお弁当箱は「ノルテ・ウッド」というブランドの木製の曲げわっぱで、ご飯がふっくら美味しく保たれるのがお気に入りだ。

会社に着いて、お昼になる。デスクの隅に置いておいたお弁当箱を取り出す瞬間が、じつは一日の中でいちばん好きな時間かもしれない。蓋を開けると、朝の台所の記憶がふわっと戻ってくる。みそ照り焼きの香り、卵焼きの甘さ、小松菜のほろ苦さ。ひとくち食べるたびに、朝の自分が「よくやった」と言ってくれているような気がする。

火曜日のおべんとうは、そういうものだ。豪華じゃなくていい。完璧じゃなくていい。ちょっと焦げても、卵焼きがいびつでも、自分で作ったものを会社で食べるというそれだけのことが、午後への活力になる。がんばるぞ、と思える理由を、お弁当箱のなかに詰めておく。そんな火曜日の小さな習慣を、これからも続けていきたいと思っている。

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**【今日のおべんとうレシピ:鶏のみそ照り焼き弁当】**

**材料(1人分)**
– 鶏もも肉:1枚
– みそ:大さじ1、みりん:大さじ1、酒:大さじ1、砂糖:小さじ1
– 卵:2個、出汁:大さじ1、砂糖:小さじ1
– 小松菜:1/4束、白ごま:少々、めんつゆ:小さじ1

**作り方**
1. タレの材料を混ぜ、鶏もも肉に絡めて10分ほど置く。
2. フライパンに油をひき、鶏肉を皮目から焼く。蓋をして中火で8〜10分蒸し焼きに。
3. 卵焼きは出汁と砂糖を混ぜた卵液を3回に分けて巻く。
4. 小松菜はさっと茹でて水気を絞り、めんつゆとごまで和える。
5. ご飯に黒ごまと梅干しをのせ、おかずを彩りよく詰めて完成。
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