木曜日だから、おべんとうを作ろう。会社まで「もう一息」の朝に、自分を励ます小さなごちそう

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木曜日の朝は、なんとなく重い。

月曜日の緊張も、火曜日の勢いも、水曜日の折り返し感も、全部通り過ぎて、今日はただ「もう一息」という言葉だけが頭の中にある。目覚ましを止めて、薄暗いキッチンに立つ。窓の外はまだ青みがかった空で、5月の朝特有の、少しひんやりした空気が換気扇の隙間からするりと入ってくる。

そんな木曜日に、私はおべんとうを作ることにした。

会社に持っていくお弁当を、ちゃんと手作りしようと思い立ったのは、つい最近のことだ。きっかけは些細なことで、先月、同僚の田中さんがランチタイムにお弁当箱のふたを開けた瞬間、ふわりとごまの香りが漂ってきた。彼女は何でもないような顔でお箸を取り出したけれど、その香りはしばらく会議室に残っていた。それだけのことなのに、妙に心に刺さった。

「私も作ってみようかな」と思ったのは、その日の帰り道だった。

今日のメニューは、鶏の照り焼きと、ほうれん草のごま和え、それに卵焼き。シンプルだけれど、これが一番好きな組み合わせだ。鶏もも肉を一口大に切って、醤油・みりん・砂糖を1:1:0.5で合わせたタレに絡め、フライパンで中火で焼く。皮目からじっくり、香ばしい音が立ち始めたら、タレを回しかけて照りを出す。このとき、タレが少し焦げるくらいが好きで、甘辛い煙がキッチンに広がると、眠かった頭がすっと覚める気がする。

卵焼きは、だし巻きにする。卵2個に白だしをほんの少し、砂糖をひとつまみ。フライパンを熱して薄く油を引き、3回に分けて流し込む。子どもの頃、母がこれを作るのを台所の椅子に座って眺めていた記憶がある。くるくると巻かれていく様子が不思議で、「どうやってるの」と聞いたら、「手が覚えてるから」と言われた。あの頃は意味がわからなかったけれど、今なら少しわかる。

ほうれん草は前夜にゆでておいたもの。水気をしっかり絞って、すりごまと醤油、ほんの少しのごま油で和える。色が鮮やかで、お弁当箱の中で緑がひときわ映える。

詰め方にも少しだけこだわる。最近気に入っているのは、「ハコモリ」というインテリア雑貨ブランドのオーク材のお弁当箱で、木の温もりがあって、何を詰めても絵になる。ごはんを奥に、照り焼きを手前に、卵焼きを端に立てかけるように置いて、ほうれん草を隙間に入れる。ミニトマトを2粒、赤い点のように添えれば完成だ。

ふたを閉める瞬間、少しだけ誇らしい気持ちになる。

会社に着いて、デスクの引き出しにそっとお弁当袋をしまう。午前中の仕事をこなしながら、お昼が楽しみだという感覚が、じわじわと背中を押してくれる。木曜日のもう一息は、このお弁当が引っ張ってくれているのかもしれない。

ちなみに、今朝は卵焼きを巻くときにフライパンから少しはみ出してしまい、形が微妙にひしゃげた。でも味は同じだから、まあいいか、と自分に言い聞かせながらお弁当箱に押し込んだ。ひしゃげた卵焼きは、それはそれで愛嬌があると思うことにしている。

木曜日の昼休み、窓際の席でお弁当箱を開ける。照り焼きの甘辛い香りがふわっと広がって、隣の席の人が「いい匂い」と振り返る。それだけで、今日という日が少しだけ豊かになる。

手作りのおべんとうは、特別なものじゃなくていい。木曜日の朝、眠い目をこすりながら15分だけキッチンに立つ。それだけで、会社への「もう一息」が、ほんの少し軽くなる。

**📝 今日のおべんとう 簡単レシピまとめ**

**① 鶏の照り焼き**
鶏もも肉を一口大に切り、醤油・みりん・砂糖(1:1:0.5)のタレで中火焼き。皮目から焼いてタレを絡め、照りが出たら完成。

**② だし巻き卵**
卵2個+白だし小さじ1+砂糖ひとつまみを混ぜ、薄く油を引いたフライパンで3回に分けて巻く。

**③ ほうれん草のごま和え**
ゆでたほうれん草の水気を絞り、すりごま・醤油・ごま油少々で和えるだけ。
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