
月曜日をなんとか乗り越えると、次にやってくるのが火曜日だ。週の真ん中にも差し掛かっていない、まだ序盤戦のこの日が、実は一番しんどいと感じることがある。「がんばるぞ」と気合を入れたつもりが、気づけば朝のアラームを三回も止めていた。そういう朝に、ふと思い立って作り始めたのが、今日のおべんとうだった。
キッチンに立ったのは6時40分。梅雨の走りの雨が窓をやわらかく叩いていて、外はまだ薄暗い。換気扇を回すと、昨夜の炒め物の名残りがわずかに漂って、すぐに消えた。冷蔵庫を開ける。たまご、残りのブロッコリー、鶏もも肉のかたまり、それからミニトマトが三つ。「これで行けるな」と小声でつぶやいた瞬間、なぜかちょっとだけ気持ちが上向いた。
メインは鶏の照り焼き。鶏もも肉を一口大に切り、醤油・みりん・砂糖を1:1:0.5の割合で合わせたタレに5分ほど漬け込む。フライパンを中火で熱し、皮目から焼くこと3分。裏返してさらに2分、タレを回しかけながら照りを出す。火を止めてから蓋をして1分蒸らすと、中までふっくら仕上がる。このひと手間が、会社の昼休みに蓋を開けたときの「あ、ちゃんと作った」という満足感につながる気がして、怠れない。
副菜はブロッコリーのごまあえ。小房に分けてレンジで2分加熱し、水気をしっかり切ってから、白すりごま・醤油・少量の砂糖で和えるだけ。所要時間は5分もかからない。彩りのためにミニトマトを添えれば、お弁当箱の中が一気に明るくなった。
卵焼きは少し甘めに。たまご2個に砂糖小さじ1、塩ひとつまみ、だし大さじ1を混ぜて、卵焼き器で三回に分けて巻く。ここで少しだけ白状すると、最初の一巻きがいつもうまくいかない。今日も端がぴらっとめくれて、断面が少しいびつになってしまった。まあ、味は変わらないから良しとする――と、毎回同じことを思いながら詰めている。
ごはんは前夜に炊いておいたものを温め直して、梅干しをひとつのせた。シンプルだけれど、これが一番ほっとする。
お弁当箱は、北欧雑貨ブランド「フィエルドボックス」の木目調ランチボックスを愛用している。蓋を閉めるとカチッと小気味よい音がして、それだけで「さあ行こう」という気になれる。子どもの頃、母が毎朝アルミのお弁当箱に詰めてくれたおかずの色合いを、なんとなく今も意識しているかもしれない。緑・黄・赤の三色が入ると、なぜか安心する。
会社に着いて、デスクの引き出しにそっとしまう。午前中の会議を乗り越えて、昼休みにそのお弁当箱を取り出す瞬間が、火曜日のひそかな楽しみだ。同僚がコンビニのサンドイッチを手に「今日何食べるの?」と聞いてくる。「手作り」と答えると、少し羨ましそうな顔をされる。それがまた、小さな励みになる。
自分のために作るおべんとうは、誰かに褒めてもらうためじゃない。ただ、火曜日の昼にちゃんとした食事をとること、それだけで午後の仕事への気力がじんわり戻ってくる。「がんばるぞ」は、朝にお弁当箱を閉めた瞬間に、すでに始まっているのかもしれない。
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