日曜日の野外おべんとう――家族と過ごす、あの草の匂いがする午後のために

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土曜日の夜、子どもたちが「明日どこ行くの?」と聞いてくる。その声はいつも、台所に立つわたしの背中に向けられている。振り返る前に、もう答えは決まっていた。「公園。おべんとう持って」。それだけで、部屋の空気がすこしだけ変わる気がした。

日曜日の朝は早い。6時半にはキッチンに立って、まだ眠そうな目をこすりながら卵を割る。フライパンに油をひくと、じゅわっという音が静かな家に響く。この音が好きだ。子どものころ、祖母が日曜日の朝だけ作ってくれた玉子焼きも、こんな音がしていた。甘くて、だしがきいていて、弁当箱のなかでいつも一番に消えた。あの記憶がそのまま、今の自分の手を動かしている。

今日のおべんとうのメインは、鶏の照り焼き。作り方はとても簡単で、鶏もも肉を一口大に切り、醤油・みりん・砂糖を同量ずつ合わせたたれに10分漬けるだけ。あとはフライパンで皮目から焼いて、たれを絡めながら仕上げる。焦げ目がついたころの香ばしい匂いが、まだ起きてこない家族を台所に引き寄せる、いわば「最強の目覚まし」だ。副菜はブロッコリーの塩ゆでと、ミニトマト。それと、ご飯に梅干しをひとつ。これだけで、弁当箱はちゃんと家族の顔になる。

ところで、弁当箱のふたを閉めようとしたとき、詰めすぎてご飯がはみ出した。押し込もうとして余計にぐちゃっとなり、結局ラップで包み直すことになった。見た目はともかく、味は同じだ、と自分に言い聞かせながら、保冷バッグに静かに収めた。

出発したのは10時すぎ。向かったのは、家から自転車で15分ほどの緑ヶ丘公園だ。梅雨の晴れ間というのは、こんなにも贅沢なのかと思うほど、空が高くて青かった。6月の朝の空気には、まだ少し湿り気があって、草の上に敷いたシートがひんやりと冷たく感じられた。子どもたちはすでに走り出している。父親はのんびりと荷物を持ちながら、すこし遅れてついてくる。

シートを広げて、保冷バッグを置く。「もうお昼にしよう」と子どもが言うのは、まだ11時前だった。それでも、野外で食べるおべんとうというのは、なぜかいつもより美味しい。草のにおいと、遠くで遊ぶ子どもたちの声と、木漏れ日の揺れる光のなかで食べると、同じ鶏の照り焼きでも、なんだか特別な一品になる。

家族みんなで同じものを食べる日曜日。それは、何か大事なことを確かめる時間のような気がする。子どもが「これ好き」と言いながら照り焼きを頬張る横で、夫がさりげなく梅干しをわたしの弁当箱に移していた。「いらないの?」と聞くと「苦手だったかな、と思って」と言う。10年以上一緒にいるのに、いまだに把握されていない。梅干し、ふつうに好きなんだけどな、と心の中でそっとつぶやいた。

野外でのおべんとうは、特別な料理でなくていい。家族が集まって、青空の下でふたを開ける、その瞬間そのものがごちそうだから。日曜日のおべんとうは、レシピよりも、その日の空気と笑い声が一番の調味料になる。来週も、また作ろうと思う。今度は、はみ出さないように。
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