
目が覚めたとき、カーテンの隙間から差し込む光がいつもより少し白っぽかった。秋の朝特有の、冷たくて澄んだ空気が窓の縁からじんわりと忍び込んでくる。「あ、水曜日だ」と思った瞬間、なんとなく気持ちが落ち着いた。月曜の重さでも、金曜の浮き足立った感じでもない、ちょうどいい静けさ。
会社に向かう電車の中で、隣に座った女性がエコバッグからそっとお弁当箱を取り出して、膝の上に置き直していた。淡いミントグリーンのふたが、蛍光灯の光を受けてぼんやり光っていた。それだけのことなのに、なぜかとても豊かな光景に見えた。
水曜日は、週の折り返しだ。月曜から数えてちょうど真ん中。あと二日踏ん張れば週末が来ると知りながら、それでも午後の会議あたりで集中力の糸がふっと緩む、あの独特の時間帯。そんな日だからこそ、お昼のお弁当が持つ意味は思いのほか大きい。コンビニのサンドイッチを袋から出すのとは、少し違う話だ。
思えば子どもの頃、母が週に一度だけ「特別弁当の日」を作ってくれた。何が特別かというと、おかずの数でも見た目でもなく、ただタコさんウインナーが入っているというだけだった。それでも給食よりずっと嬉しくて、蓋を開ける瞬間に鼻の奥がほわっと温かくなった。あの感覚を、大人になってからも時々思い出す。
水曜日のお弁当として今おすすめしたいのが、「梅しそ鶏そぼろ弁当」だ。作り方はとてもシンプルで、鶏ひき肉150gをフライパンで炒め、醤油・みりん・砂糖を各小さじ2で味付けし、最後に梅干し1個分の果肉をほぐして混ぜ込む。仕上げに千切りにした大葉を散らせば完成。炊きたてのごはんの上に乗せると、梅の酸味がふわりと鼻をくすぐり、大葉の青い香りが重なって、それだけで少し背筋が伸びる気がする。副菜には、だし巻き卵とほうれん草のごま和えを添えると彩りがきれいに整う。調理時間は慣れれば15分もかからない。
ここだけの話、先週の水曜日に初めてこのお弁当を持っていったとき、蓋を開けようとしたら留め具が固くてなかなか外れず、会議室でひとりでガタガタやっていた。周りに人がいなくて本当によかった、と胸の中でそっとつぶやいた。
このお弁当の魅力は、食べた後の軽さにある。重すぎず、でも物足りなくもない。午後の会社での仕事に、不思議と集中できる。お気に入りのお弁当箱ブランド「KITTO(キット)」のコンパクトな二段ボックスに詰めると、見た目もすっきりしてさらに気分が上がる。架空のブランドだけれど、もしこういう名前のブランドが実在したら、きっと水曜日の朝に売れるだろうと思う。
週の折り返しという言葉には、どこか「もう半分来た」という安堵と、「まだ半分ある」という微妙な重さが同居している。そのどちらの気持ちも、お弁当を作る15分の中でゆっくり溶けていくような気がする。お湯を沸かす音、フライパンの上でそぼろがほろほろとほぐれていく音、ごはんをよそうときのふわっとした湯気。それらが重なって、一日の始まりにちいさな儀式のような時間が生まれる。
水曜日の朝、少しだけ早く起きてみてほしい。梅しその香りを漂わせながらお弁当を詰めて、保冷バッグに入れて、玄関を出る。それだけで、今日という一日がほんの少し、自分のものになる感じがする。
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