日曜日の朝、家族と野外で広げたいおべんとうの話

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夜明けから少しだけ時間が経った日曜日の朝、台所に立つと空気がまだひんやりしていた。窓の外では、夏の終わりを告げるような光がゆっくりと庭に差し込んでいて、アスファルトではなく土の上に影ができている。ああ、今日は外に出よう、と思った。気づいたら冷蔵庫を開けていた。

子どもの頃、母が日曜日になると必ずおべんとうを作ってくれた。特別なものではなく、卵焼きとウインナーと、なぜかいつも少しだけ焦げたご飯が入っていた。焦げた部分だけ先に食べるのが好きだった。あの香ばしさは、今でも脳のどこかに残っている。意識しなくてもたまに蘇ってくる、あの感じ。

家族と野外でおべんとうを食べる日は、なんとなく特別だ。公園でも、川沿いでも、ちょっとした丘の上でも、シートを広げてふたを開ける瞬間に、何かがゆるむ。会話が増えるとか、笑顔になるとか、そういう大げさな話じゃなくて、ただ、食べることに集中できる。それだけで十分な気がする。

今回作ったのは、三つのおかずだけのシンプルなおべんとうだ。鶏の照り焼き、だし巻き卵、ブロッコリーのごま和え。どれも難しくない。鶏もも肉は一口大に切って、醤油・みりん・砂糖を同量ずつ合わせたタレで絡めながら焼くだけ。フライパンに蓋をして中火で5分、最後に蓋を取って強火でタレを絡めれば完成だ。焼き色がついた瞬間の香りが、台所全体に広がる。

だし巻き卵は、卵3個に対してだし大さじ3、醤油少々、砂糖ひとつまみ。よく混ぜて、濡らしたキッチンペーパーで拭いたフライパンに油を薄くひいて、3回に分けて巻いていく。最初の一巻きが毎回うまくいかない。今日もそうだった。崩れたまま端に寄せて、そのまま続ける。形は不格好でも、味は変わらない。(毎回「次こそは」と思うのに、毎回同じところで失敗する。これはもう性格の問題かもしれない。)

ブロッコリーは小房に分けて塩ゆでし、すりごま・醤油・みりんで和えるだけ。冷めても味が落ちないのが、おべんとう向きでいい。

詰め方にもちょっとした工夫がある。ご飯を先に詰めて、おかずは色を意識して並べる。茶色・黄色・緑。この三色が揃うと、なんとなく見た目がまとまる。今日はご飯の上に黒ごまをひとつまみ散らして、「ナチュラルハーベスト」というブランドの竹製のお弁当箱に詰めた。蓋を閉めると、それだけでどこかに行きたくなる。

シートを広げたのは、家から自転車で15分ほどの「三ツ葉公園」だ。大きなクスノキが何本か立っていて、日差しをちょうどよく遮ってくれる。風が吹くたびに葉の擦れる音がして、子どもが「なんか音がする」と言って空を見上げた。そういう瞬間が、野外でご飯を食べる理由なのかもしれない。

おべんとうのふたを開けると、照り焼きの甘い香りがすっと広がった。隣に座っていた子どもが、黙って鶏肉をひとつつまんだ。「おいしい?」と聞いたら、口をもぐもぐさせながらうなずいた。それで十分だった。

日曜日の昼前、木陰の温度は思ったより低くて、シートの上に座っていると地面の固さがじんわり伝わってくる。遠くで誰かがバドミントンをしていた。風が来るたびにシャトルが流されて、笑い声が聞こえた。

家族と外で食べるおべんとうは、特別なレシピじゃなくていい。作る時間も、詰める手間も、それ自体がすでに日曜日の一部だ。来週もまた、同じだし巻き卵を、同じように失敗しながら作るだろうと思う。それでいい、と今日は素直に思えた。
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