
月曜日をなんとか乗り越えて、ふと気づけば火曜日の朝。目覚ましより少し早く目が覚めてしまい、薄暗いキッチンに立つ。窓の外はまだ藍色で、隣の家の屋根だけが朝の輪郭をうっすらと帯びている。こんな時間に起きるのは、会社に持っていくおべんとうのためだ。
お弁当を作り始めたのは、たしか数年前のこと。物価が上がって、毎日コンビニで昼食を済ませることへの小さな罪悪感と、財布の薄さへの焦りが重なった。最初はおにぎりひとつだけ。それがいつの間にか、ちゃんとしたおかずを詰めるようになった。子どもの頃、母が毎朝黙々とお弁当を作っていた姿を思い出す。あの頃は当たり前だと思っていたけれど、大人になってみると、あれがどれほど大変だったかがよくわかる。
今日のメインは、豚肉のブロッコリー巻き。甘辛ダレで仕上げるやつだ。
ブロッコリーは2026年から「指定野菜」になり、価格も比較的安定してきた。
おかげで気軽に使えるようになった、ありがたい野菜のひとつ。
**作り方はとても簡単。**
ブロッコリーを小房に分けてさっと塩茹でする。豚バラ肉を広げてブロッコリーをひとつずつ包み、フライパンで転がしながら焼く。火が通ったら、しょうゆ・みりん・砂糖を1:1:0.5の割合で合わせたタレを絡めて、照りが出るまで煮詰めれば完成。仕上げに白ごまをひとつまみ。所要時間は10分もあれば十分だ。
フライパンから立ち上がる甘辛い香りが、まだ眠たいキッチンにふわっと広がる。醤油が焦げるほんの一歩手前のあの香りは、なぜかいつも気持ちを少しだけ前向きにしてくれる。冷ます間に卵焼きを作り、白いご飯を詰めて、彩りにプチトマトをふたつ。お気に入りの曲げわっぱに、今日もきちんと収まった。
ちなみに今日は、少し前に雑貨屋「ハコノモリ」で買ったシリコンのおかずカップを初めて使ってみた。ところが、蓋を閉めようとしたら微妙にはみ出してしまって、結局ひとつ取り出すことに。買った意味とは、と心の中でひとりツッコミを入れながら、ふつうのアルミカップに入れ直した。まあ、こういう日もある。
会社に着いて、お昼になる。休憩室の窓から差し込む秋の日差しはやわらかくて、弁当箱を開けるとほんのりまだ温かい。豚巻きにそっと箸を入れると、甘辛いタレがじわっとにじみ出てくる。隣の席の同僚が「いい匂いするね」と言いながらこちらを覗き込んだ。そういう一言が、なんだかうれしい。
火曜日というのは、週の中でいちばん地味な曜日だと思う。月曜日のような「さあ始まるぞ」という緊張感もなく、水曜日の「折り返し感」もない。ただ静かに、粛々と続いていく平日のど真ん中。でも、だからこそ、おべんとうのような小さな楽しみが効いてくる。
まだまだ先が長い火曜日は、ボリュームのあるおかずで元気を出したいもの。
甘辛の豚巻きは、そういう意味でも火曜日にちょうどいい。食べ終えた後、がんばるぞ、という気持ちが自然と湧いてくる。不思議なことに、手作りのおべんとうにはそういう力がある。
明日の水曜日は何を詰めようか。そんなことを考えながら、午後の仕事に戻る。窓の外では、薄い雲が秋の空をゆっくりと流れていった。
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