
目が覚めたとき、カーテンの隙間から差し込む光がいつもより柔らかかった。ああ、日曜日だ、とすぐにわかった。平日の朝とはまるで違う、時間がゆっくり流れているあの感覚。そしてその瞬間、頭の中にふっと浮かんだのは「今日こそ、外でお弁当を食べよう」というひとつの決意だった。
子どもの頃、父がよく週末に大きなバスケットを持ち出してきた。中身は母が早起きして詰めた卵焼きやおにぎり、それから必ず入っていたタコさんウインナー。公園のベンチに広げたその弁当の、醤油と海苔が混ざったような香りは、今でも鼻の奥にはっきりと残っている。野外で食べるごはんがなぜあんなにおいしいのか、大人になってもその理由はうまく説明できないけれど、とにかくそういうものだと思っている。
今年の秋は特別に、空気が澄んでいる気がする。10月に入ってからというもの、朝の風がひんやりと頬に触れて、日中はやわらかな日差しが降り注ぐ。こういう日は、家の中にいるのがもったいない。家族を連れて、近所の緑地公園「ひかりの丘グリーンパーク」へ向かうことにした。
お弁当の準備は、前夜のうちに少しだけ段取りをしておくと朝がぐっと楽になる。まず炊いたごはんを冷ましておき、翌朝にぎるだけの状態にしておく。おかずは三品あれば十分だ。定番のから揚げ、卵焼き、そして子どもが大好きなブロッコリーのごまあえ。作り方はどれも難しくない。
から揚げは、鶏もも肉を一口大に切り、醤油・みりん・おろし生姜・にんにくに15分ほど漬け込む。片栗粉をまぶして、170度の油でじっくり揚げるだけ。冷めてもしっとりしているのが、お弁当向きのから揚げの条件だ。卵焼きは、卵2個に対してだし小さじ1、砂糖ひとつまみ、醤油数滴を混ぜ、フライパンで丁寧に巻く。甘さ控えめにすると、大人も子どもも食べやすい。ごまあえは茹でたブロッコリーをすりごまと醤油、砂糖で和えるだけ。5分もあれば完成する。
おにぎりは、塩を少し多めに握るのがコツ。野外で食べると塩気がちょうど良く感じられる。梅干しと鮭、ふたつの具を用意して、海苔で包んでおく。アルミホイルに包むより、最近流行りの「おにぎりフィルム」で個包装にすると、子どもたちが自分でパリッと開けて食べられるので喜ぶ。
弁当箱に詰めるとき、ひとつだけ失敗談を白状しておく。先週の練習のとき、から揚げをまだ熱いまま詰めてしまって、フタを開けたら見事に水蒸気でべちゃべちゃになっていた。家族全員が無言でそれを眺めた数秒間は、なかなか忘れられない光景だ。おかずは必ず粗熱を取ってから詰めること、これは絶対に守ってほしい。
公園に着くと、夫がレジャーシートを広げ、子どもたちが早くも走り回っていた。風がさらさらと草の上を渡って、どこかで金木犀のにおいがした。秋の野外には、この香りがよく似合う。シートの上に弁当箱を並べ、みんなで蓋を開ける瞬間が好きだ。「わあ」と声が上がる、あの一瞬が。
夫がおにぎりを手渡してくれるとき、ちらりと横顔を見た。少し眠そうな目をしていたけれど、口元はゆるんでいた。日曜日の朝に早起きしてくれた、その小さな優しさが、お弁当をいっそうおいしくする。
家族で食べる野外のお弁当は、料理の腕前よりも、その場の空気と一緒に味わうものだと思う。青空の下、風の音を聞きながら、ただ一緒にごはんを食べる。それだけで、日曜日はもう十分に豊かだ。来週も、また作ろうと思う。
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