
朝、6時15分。まだ空気が重たい梅雨の水曜日に、台所に立つ。換気扇をまわすと、ぼんやりとした風がカーテンを揺らした。月曜日の疲れが火曜日で少し溶けて、それでもまだ、週の折り返しというのはなんとなく体にこたえる。だから今日は、いつもより少しだけ丁寧に、おべんとうを作ろうと思った。
会社に持っていくおべんとうを毎日作るようになったのは、3年前のことだ。最初はコンビニのサンドイッチで十分だと思っていたし、正直なところ今でもそう思う日もある。でも水曜日だけは、なぜか自分の手で作りたくなる。週の折り返しを、ただ通過するだけじゃなく、何かひとつ自分を労うような感覚が欲しくなるのかもしれない。
今日のおかずは、鶏のはちみつ味噌焼きにした。子どもの頃、母が運動会の前の晩に必ず作ってくれた味とほぼ同じで、なぜか今もこの匂いを嗅ぐと少しだけ背筋が伸びる気がする。フライパンに油をひいて、鶏もも肉を皮目から焼く。じゅっという音と、甘い味噌の香りがふわっと台所に広がった。この瞬間だけは、水曜日の朝でも悪くないと思える。
**【水曜日においしい!鶏のはちみつ味噌焼きの作り方】**
材料(1人分):鶏もも肉1枚、味噌大さじ1、はちみつ小さじ2、醤油小さじ1、みりん小さじ1、すりおろし生姜少々。
作り方はとてもシンプルだ。調味料をすべて混ぜ合わせてタレを作り、鶏肉に揉み込んで10分ほど置く。あとはフライパンで皮目から中火で4〜5分、ひっくり返してさらに3分焼くだけ。焼きあがったら少し冷ましてから切るのがポイントで、こうすると肉汁が逃げにくい。副菜には、さっと茹でたブロッコリーと、昨夜の残りのきんぴらごぼうを添えればそれだけで十分に見栄えがする。
おべんとう箱は、「ハコノワ」というインテリア雑貨ブランドで見つけた杉材の曲げわっぱ。少し奮発したけれど、これに詰めるとどんな地味なおかずでも不思議と美味しそうに見える。白いご飯の上に梅干しをひとつ置いて、蓋をしめる。
会社の昼休み、デスクの片隅でそっと蓋を開ける瞬間が好きだ。ほんのりと残った味噌の香りが鼻をくすぐる。隣の席の同僚がちらっとこちらを見て、「なんかいい匂いする」と言った。それだけで、今朝早起きした甲斐があったような気持ちになる。
ただ、今日は少しやってしまった。タレを揉み込んでいるとき、勢いあまって鶏肉が手からすべって流し台へ落ちた。5秒ルールは心の中でそっと却下して、静かに拾い直した。誰も見ていない台所の朝というのは、こういう小さな失敗がいくつか積み重なっている。
2026年の食トレンドとして、「自分ファースト」や「自分ご褒美」という考え方が注目されている。
水曜日のおべんとうは、まさにそういう感覚に近い。誰かに見せるためでも、節約のためだけでもなく、週の折り返しに自分自身を少しだけ大切にするための行為。
家計に配慮しながらも旬の食材を使い、栄養価の高い食事を家庭で作るスタイルが、2026年の食の流れのひとつになっている。
鶏のはちみつ味噌焼きは、まさにそのど真ん中にある料理だと思う。特別な食材は何もいらない。味噌とはちみつという、どこの家にもある調味料だけで、会社に持っていくおべんとうが少しだけ豊かになる。
曜日ごとにおべんとうのテーマを決めておくと、毎朝の悩みが減る
という考え方も最近のブログでよく見かける。水曜日を「自分ご褒美の日」と決めてしまえば、それだけで朝の台所に立つのが少し楽しくなるかもしれない。
週の折り返しを、コンビニのおにぎりで乗り越えるか、手作りのおべんとうで乗り越えるか。どちらが正解ということはない。ただ、蓋を開けたときにほんの少し笑顔になれるなら、それで十分だと思っている。水曜日の昼休みくらいは、自分のために作った温かいものを、ゆっくり食べたい。それだけのことが、思いのほか、一日の後半を変えてくれる。
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